くすりと食事の相互作用の基本

〇はじめに

私たち薬剤師は、患者さんに安全かつ効果的に薬を使用していただくことを使命としています。しかし、薬の効果は食事との組み合わせによって変化することがあります。この現象を「薬と食事の相互作用」と呼びます。本記事では、薬と食事の相互作用の基本について解説し、注意すべき点や相互作用を防ぐための工夫について紹介します。

 

〇薬と食事の相互作用とは？

 

薬と食事の相互作用とは、薬物と食品成分が体内で影響し合うことで、薬の効果が変化したり、副作用が現れたりする現象です。相互作用には、大きく分けて2種類あります。

 

薬物動態学的相互作用：食品成分が薬物の吸収、分布、代謝、排泄に影響を与える相互作用。

薬力学的相互作用：薬物と食品成分が体内で同じ作用部位に影響を与え合う相互作用。

 

薬物動態学的相互作用の例としては、食事によって薬物の吸収が変化する場合があります。例えば、テトラサイクリン系抗生物質は、カルシウムやマグネシウムを多く含む食品と一緒に服用すると、体内への吸収が阻害されて効果が減弱します。

 

一方、薬力学的相互作用の例としては、ビタミンKを多く含む食品とワルファリンの相互作用が挙げられます。ワルファリンは血液凝固を抑制する薬ですが、ビタミンKは血液凝固を促進する作用があります。そのため、ワルファリンを服用中に納豆や青汁などのビタミンKを多く含む食品を摂取すると、ワルファリンの効果が減弱してしまう可能性があります。

 

〇注意すべき代表的な相互作用

 

・グレープフルーツジュースとの相互作用

グレープフルーツジュースは、肝臓で薬物を分解する酵素（CYP3A4）の活性を阻害します。その結果、本来なら分解されるはずの薬物が体内に蓄積し、副作用が現れやすくなります。カルシウム拮抗薬や一部のスタチン系薬剤など、多くの薬がグレープフルーツジュースとの相互作用の影響を受けます。

 

・納豆・青汁などビタミンKを多く含む食品とワルファリンの相互作用

先述の通り、ビタミンKを多く含む食品はワルファリンの効果を減弱させる可能性があります。納豆や青汁以外にも、クロレラ、ケール、ほうれん草などがビタミンKを多く含みます。ワルファリンを服用中の方は、これらの食品の摂取量を一定に保つことが大切です。

 

・カフェインとの相互作用

カフェインは、一部の薬の効果を増強したり、副作用を引き起こしたりする可能性があります。例えば、気管支拡張薬のテオフィリンは、カフェインとの相互作用により、血中濃度が上昇し、副作用が現れやすくなります。また、カフェインは鎮静作用のある薬の効果を減弱させる可能性もあります。

 

・その他の相互作用

◇鉄剤とお茶やコーヒー：タンニンが鉄の吸収を阻害

◇降圧薬とリコリス：リコリスに含まれるグリチルリチン酸が降圧薬の効果を増強

◇睡眠薬とアルコール：中枢神経抑制作用が増強

 

〇相互作用を防ぐための工夫

 

薬を服用する際の食事のタイミング 薬の種類によって、食事との関係で服用タイミングが異なります。処方薬に添付される説明書をよく読み、指示通りに服用しましょう。

 

＜処方薬と一緒に摂取を避けるべき食品や飲料＞

グレープフルーツジュースやビタミンKを多く含む食品など、特定の食品や飲料は処方薬と一緒に摂取を避けるべきです。疑問がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

 

＜薬剤師や医師への相談の重要性＞

薬と食事の相互作用は複雑で、すべてを把握するのは難しいものです。処方薬を服用する際は、必ず医師や薬剤師に自分が普段摂取している食品や飲料、サプリメントについて伝えましょう。専門家からのアドバイスを受けることで、相互作用のリスクを最小限に抑えることができます。

 

〇まとめ

 

薬と食事の相互作用は、薬の効果や副作用に大きな影響を与える可能性があります。相互作用のメカニズムを理解し、注意すべき食品や飲料を把握することが大切です。また、処方薬を服用する際は、医師や薬剤師に相談し、適切な服用方法を守ることが重要です。

 

薬と食事の相互作用について正しい知識を持ち、専門家とコミュニケーションを取ることで、薬物療法の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。自己判断せず、疑問や不安がある場合は、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。

 

 

[参考資料]

国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報」https://hfnet.nibiohn.go.jp/